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​槍の用材、ハナガガシ

近年の古武道各流派における共通する課題として、昔ながらの武具の確保が大きな課題となっている。
特に長尺・無節の稽古槍を使用する宝蔵院流槍術にとって、用材の調達は困難を極めている。稽古槍の用材となる長尺・無節の樫材が日本国内では既に枯渇した状況なのである。
奈良宝蔵院流槍術保存会では独自に山林を購入し、槍柄に適した樫(葉長樫:ハナガガシ)のドングリを宮崎県・大分県で採集して、播種・育樹・植樹をしている。

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​四国のハナガガシ

ハナガガシは四国南西部・九州中南部のみに分布して、その多くは社寺林であるとされている。

九州は熊本、天草の福連木国有林のことを「官山(かんざん)」と呼ぶが、徳川家綱公の万治元年から徳川家定公の安政5年に至る200年間、官山の樫の木は江戸幕府納めとなっていた。槍の柄となる樫は「ハナガガシ」が最良とされていたのである。

四国では高知県と愛媛県に存在し、土佐市の松尾八幡宮では市指定天然記念物に指定されているものもある。

天然記念物指定や社寺林であることから間伐や伐採などができないこともあり、近年では枯木や倒木などが見られ、土佐槍術会では槍の用材として倒木の活用などの検討を始めている。

ハナガガシは、須崎市で初めて社寺林以外での存在が確認されたり佐川町出身の植物学者である牧野富太郎氏によって命名されているなど、高知県における特別な樹木でもある。

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